水の物語〜水とくらしについて、兼六園で考える

6安全な水とトイレを世界中に

SDGsゴール6の水と関連するスポットを、水にまつわるさまざまな課題を思い浮かべながら回ってみましょう。
回る順番は自由で、水に着目して眺めるほどに、兼六園はもちろん、SDGsも身近に感じられるようになります。

噴水

13代藩主・斉泰(なりやす)が金沢城二の丸に噴水を作るために、試作させたといわれ、現存する日本最古の噴水といわれています。
約5メートルある霞ヶ池との高低差を利用して、伏せの越し(逆サイフォン)構造により水が噴き出しています。
水圧のみで全く動力を使わない、自然エネルギー100%でサステイナブルな噴水です。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

動力を使わずに水が噴き上がる原理を考えてみよう


徽軫灯籠(ことじとうろう)

もともとは同じ長さだった灯籠の脚は、何らかの原因で片脚が短くなりました。
しかし、そのアンバランスさによって日本人の好む“破調(はちょう)の美”に通じ、兼六園を代表する景観となりました。
この辺りではサギが魚を捕まえるシーンに出遭うこともあります。豊かな水辺環境が維持されている兼六園らしい光景です。

このスポットで学習できる項目


瀬落とし

「徽軫灯籠」が琴柱を、手前の「虹橋」が琴の胴を、そしてさらに手前の「瀬落とし」と呼ぶ小さな堰(せき)が琴の絃を表し、3つがセットとなって琴を表しています。
水の発する音にもこだわっている兼六園。瀬落としが奏でる軽やかな水の音にも、ぜひ耳を傾けてみてください。

このスポットで学習できる項目


石の管

瀬落としのそばの園路にある敷石のようなものは実は石の管で、中には直径18センチの孔がくりぬかれています。
江戸時代、ここから逆サイホンの原理を利用して、隣にあります金沢城(二の丸)へ水を揚げた水道管でした。
今は使われていませんが、当時としてはとても画期的なものでした。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

江戸時代、なぜここまで大掛かりな仕掛けを作って水を城に送っていたのでしょうか?


眺望台

ここからは金沢のまちや日本海、能登半島までを見晴らすことができます。
そして、この場所では、曲水の豊かな流れ「水泉」と山々の「眺望」を同時に眺めることができます。
兼六園の6つの勝れたところの中でも、両立がむずかしい2つが見事に共存しています。
このような高台に豊富に水が流れているのも不思議だと思いませんか。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

この水がどこからくるのか? 曲水の流れに沿って遡ってみましょう


雪吊り(ゆきづり)

北陸地方特有の湿気をたっぷりと含んだ重たい雪から枝を守る「雪吊(ゆきづり)」は冬の風物詩として有名。
毎年11月1日に雪吊のシンボル的な存在の唐崎松(からさきのまつ)から園内の約800カ所に施されます。
ちなみに雪吊りに使用された藁縄は、外された後は細かく裁断されて、堆肥として再利用されています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

北陸に湿気の多い雪がたくさん降るのはなぜか? 考えてみましょう


霞ヶ池(かすみがいけ)

この池は兼六園の中央にあり、面積は約5,800平方メートルで、園内で一番大きな池です。
この池は琵琶湖に見立てられていて、蓬莱島(ほうらいじま)と呼ばれる島は、琵琶湖の竹生島(ちくぶじま)に見立てています。
13代藩主の斉泰が現在の大きさに拡張しました。

このスポットで学習できる項目


曲水(きょくすい)

千歳台と呼ばれる「宏大」な台地を、曲がりくねり、ゆったりと流れる曲水は、「水泉」の景勝に重要な役割を担っています。
両岸にはサクラやツツジが植えられ、また流れの中にはカキツバタも植えられ、4〜5月は水辺を色とりどりの花々が彩りを添えます。
曲水の水量が一年を通じて変わらないように作られているのも特徴です。

このスポットで学習できる項目


雁行橋(がんこうばし)

越冬のために北陸にやってくる渡り鳥の雁(かり)。
この橋はV字編隊飛行する雁の姿を、11枚の赤戸室石で表しています。
この辺りの曲水は川幅いっぱいに水が流れ、水の豊かさと、曲水の中に置かれた玉石によって水面がキラキラと輝き、「水泉」の美しさを最も感じることができる場所の一つです。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

曲水の玉石にはほとんど藻がついていません。それはなぜでしょう?


花見橋

その名前の通り、桜の花が咲く頃は桜の花に包まれ、また5月には曲水の中にカキツバタが咲き乱れ、橋の上からの眺めは実に見事です。
園内には他にも日本人が愛してやまない雪月花を冠した雪見橋や月見橋をはじめ、曲水には形や材質が異なるさまざまな橋が架かっています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

曲水にいくつの橋がかかっているか? 数えて、材質ごとに分類してみよう


山崎山

まるで深い山にいるような深閑とした佇まいで、ケヤキやカエデ、トチノキなどの落葉広葉樹が多く、とくに秋の紅葉が見事で、紅葉山とも呼ばれます。
麓の洞窟からは毎秒70リットルもの水が流れ出し、ここから曲水がスタートしています。
山崎山は金沢城の外惣構(そうがまえ)の土塁(どるい)跡を築山に再利用したといわれています。

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氷室跡(ひむろあと)

氷室は冬に雪を詰めて、夏には冷蔵庫のような役割を果たしていました。
これは明治時代に入ってから使われていた氷室の跡ですが、加賀藩では真夏に氷室開きを行い、江戸の将軍家に雪氷を届けていた風習が今も残っています。
また、氷室は電気などを使用しない低温で湿潤な貯蔵庫として再注目されています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

再エネでもある雪氷熱の現代的な使い道について調べてみよう


沈砂池(ちんさち)

ここから約10キロ上流の犀川(さいがわ)から取水した水が、「辰巳用水(たつみようすい)」によって運ばれて、ここで泥砂を沈めて浄化した後、山崎山の洞窟から流れ出ています。兼六園の水の物語の起点がここになります。
夏になるとホタルが舞い、まちなかにありながら豊かな自然が守られています。

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学習ポイント

ホタルが生息できる環境について調べてみよう


兼六園の苔

兼六園には約70種類もの苔があり、その違いを見比べるのも面白いです。
苔は陸の豊かさを守る重要な役割を果たし、また保水力が高く、まちなかの緑化に使えば、都市型の洪水を防いだり、屋上緑化でヒートアイランドを抑制したりと、気候変動の具体的な対策となることからも、注目されています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

自然界での苔の役割について調べてみよう


栄螺山(さざえやま)

高さ9メートルの築山で、13代藩主・斉泰が霞ヶ池を掘り広げた際に出た残土を盛り上げて作りました。現代風に言えば廃棄物の見事な再利用方法です。
ここから眺める霞ヶ池は、手前に広々とした水面と蓬莱島、その奥には唐崎松が佇み、さらに借景として卯辰山を取り込み、奥行き感のある「宏大」な眺めです。

このスポットで学習できる項目

夕顔亭(ゆうがおてい)

11代藩主・治脩(はるなが)が250年ほど前に建てた茶室です。
この辺りは「蓮池庭(れんちてい)」と呼ばれていたところで、5代藩主・綱紀(つなのり)が最初に築庭した、兼六園の庭園としての原点です。
滝の音を聞き、景色を眺めながらお茶を楽しめるように、茶室としてはとても開放的な造りになっています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

ヤシ類の根っこの化石でできた手水鉢を探してみよう


翠滝(みどりたき)

和歌山県にある那智の滝をイメージしたといわれ、力強い石組みと周囲の鬱蒼とした樹木とが相まって、渓谷の趣があります。
この滝を作らせた11代藩主・治脩は気に入った音が出るまで滝を何度も作り直させたといわれています。
黄門橋や噴水、そしてこの滝と、兼六園は水が発する音にもこだわって作庭されています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

滝の音を大きくするためにどのような工夫がされているか? 考えてみよう


瓢池(ひさごいけ)

もともと沼地だったところを手入れしたもので、池が瓢箪(ひょうたん)の形をしていることからその名前がつきました。
池の中には、綱紀により長寿と永劫の繁栄を願う三神仙(さんしんせん)島が築かれています。
兼六園に飛来する野鳥は種類が多く、この池の周りではカワセミを撮影する愛鳥家をよく見かけます。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

池の中州にかかる「日暮の橋」の四半模様にも注目しよう


いまの日本では蛇口をひねれば、いつでも安全に飲める水が出てきますが、その安全な水を得るために先人たちは大変な苦労をしました。
そして世界を見ると、今もなお安全な水を得ることができない人たちも大勢いるということにも、ぜひ思いを馳せてください。

このコースの学習に活用できる学習シートをご用意しました。
学習シートはPDFファイルです。印刷してご利用下さい。

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コースマップ

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コラム 辰巳用水

辰巳用水は、いまから約390年前、3代藩主・利常(としつね)が金沢城に水を引くために、測量技術に長けた天才技術者・板屋兵四郎(いたやひょうしろう)に命じて、一年足らずで完成させたといわれます。なかでも岩盤をくり抜いた約4キロにも及ぶ水のトンネルは高い技術によって完成したもので、そのトンネルは現役で使われています。
当時の最先端技術で作られた辰巳用水は一部が国の史跡にもなっています。

兼六園の小立野(こだつの)口を出た先にまっすぐ続く「小立野通り」は、かつて戸室石を運んだ石引(いしびき)道で、石引という地名も残ります。
この道沿いに続く板塀に沿って辰巳用水が流れている様子を見ることができます。