緑の物語〜緑のあるまちの魅力を兼六園で体感

11住み続けられるまちづくり

気候変動の具体的な対策や、陸の豊かさを守ることにも貢献する、まちなかにある豊かな緑。
その存在を意識しながら園内を歩けばで、SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」で、いかに緑が重要かを、体感しながら学ぶことができます。

桜ヶ岡

桂坂口から入園してすぐ、桜の木が多いことからこのように呼ばれています。開花時期に合わせた夜間のライトアップは見事。
手入れの行き届いた木々と、その根元に広がる美しい苔が、これから始まる庭園散策の期待を高めてくれます。
ゆるい坂を登れば、まもなく徽軫灯籠(ことじとうろう)が見えてきます。

このスポットで学習できる項目

徽軫灯籠(ことじとうろう)

もともとは同じ長さだった灯籠の脚は、何らかの原因で片脚が短くなりました。
しかし、そのアンバランスさは日本人が好む“破調(はちょう)の美”に通じ、兼六園を代表する景観に。
新緑の春、強い日差しを遮ってくれる濃い緑に包まれる夏、紅葉の秋、そして雪景色の冬と、四季折々に美しい風景が見られます。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

なぜ徽軫灯籠というのか? 調べてみましょう

眺望台

ここからは金沢のまちや日本海、能登半島までを見晴らすことができます。
また、医王山(いおうぜん)や戸室山(とむろやま)など、豊かな自然がある里山から伸びた緑地帯が、兼六園や目の前の卯辰山(うたつやま)へと続いている様子を見ることができます。
この緑地帯をさまざまな生きものが行き交うことで、金沢のまちなかの豊かな自然環境が保たれています。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

緑地帯ができた理由を考えてみましょう

唐崎松

樹齢約180年のクロマツで、11月から3月の雪吊りが施された姿はとても美しく、徽軫灯籠ともども、金沢のシンボル的な存在に。
13代藩主の前田斉泰(なりやす)が琵琶湖畔にある唐崎神社から種を取り寄せたもので、水面に枝を伸ばした松の姿は鶴が羽ばたくようでもあります。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

雪吊りを施す理由を考えてみましょう

霞ヶ池・蓬莱島

面積は約5,800平方メートルと園内で一番大きな池が霞ヶ池。
この池は琵琶湖に見立てられていて、蓬莱島(ほうらいじま)と呼ばれる島は、琵琶湖の竹生島(ちくぶじま)に見立てているそうです。
この辺りは千歳台と呼ばれ、13代藩主・斉泰が今の大きさに池を拡張しました。

このスポットで学習できる項目

いろいろな松

園内には約8200本の樹木があり、なかでも重要な「特別名木」が19本、「名木」は54本あります。
特別名木の唐崎松や玩月松(がんげつまつ)、根上松〈写真〉をはじめ、目を引く松が多いのも特徴。
松は主要なものだけでも約200本あり、樹種はクロマツとアカマツが多いです。
松の枝ぶりや種類の違いにも注目しましょう。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

貴重な名木が絶えぬよう、兼六園でしていることを調べてみましょう

いろいろな桜

日本さくら名所100選にも選ばれる兼六園。
園内にはソメイヨシノ約190本、ヒガンザクラ約70本、サトザクラ約50本、ヤマザクラ約40本、その他の桜が約50本と、約400本の桜が植えられています。
兼六園菊桜〈写真〉や兼六園熊谷など、兼六園の名前を冠した珍しい桜もあります。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

さまざまな桜の種類の違いを整理してみましょう

カキツバタ

曲水に約1万株のアヤメ科のカキツバタが植えられ、紫色の花が咲き乱れる5月は「水泉」が一層際立って見えます。
カキツバタが花開くとき、「ポン」と音がするとも言われますが、実際にはそんな音はせずとも、一瞬に花が開くよう様子は、そんな音が聞こえそうです。

このスポットで学習できる項目

山崎山

まるで深い山にいるような深閑とした佇まいで、ケヤキやカエデ、トチノキなどの落葉広葉樹が多く、とくに秋の紅葉が見事。紅葉山とも呼ばれます。
ここは金沢城を防衛するために造られた外惣構(そうがまえ)の土塁跡といわれ、12代藩主の斉広(なりなが)が竹沢御殿を作った際、庭の築山に改修しました。

このスポットで学習できる項目

紅葉する樹木

カエデ類はもちろん、さまざまな木々の紅葉を楽しむことができます。
また、同じカエデでも、赤くなるものや黄色くなるもの、さらには赤や黄色、緑のグラデーションになったものなどさまざま。
紅葉のメカニズムを学び、樹種や生育環境などの違いによって、どんな変化があるかも観察しましょう。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

紅葉する木の代表として、カエデとモミジがありますが、その違いを調べて、園内で探してみましょう

いろいろな苔

絨毯のようなヤマトフデゴケ〈写真〉をはじめ、兼六園には約70種類もの苔があります。
苔は自然界で陸の豊かさを守る重要な役割を果たし、保水力も高く、まちなかの緑化に使えば、都市型の洪水を防いだり、屋上緑化に使えば、ヒートアイランドを抑制したり、人々に癒しを与えたりもしています。

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学習ポイント

私たちの暮らしに合った苔の新しい使い方を考えてみましょう

秋の七草

万葉集に収められている山上憶良の2首に由来する花々で、ハギ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、クズ、フジバカマ、オミナエシ〈写真〉の7つ。
かつては身近で見られましたが、フジバカマやキキョウなど、絶滅が危惧されているものも。9〜10月ごろには園内や隣の金沢城公園でも見られます。

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学習ポイント

七草それぞれの生育場所や、人との関わり方の変化について調べてみましょう。

梅林

昭和43年(1968)から2年をかけて作られ、北野天満宮、太宰府天満宮、湯島天神、水戸偕楽園などの協力により、全国の名梅が集められています。
平成6年(1994)から10年以上を費やして、特別名勝庭園にふさわしい今の姿に再整備されました。
収穫された実は特別支援学校や福祉施設に配られています。

このスポットで学習できる項目

松の傷

梅林の一角には樹皮がハート形に剥ぎ取られた松があります。戦時中に軍用機の燃料にするため、松ヤニを採取した跡だそうです。
江戸時代に作庭された兼六園が、そのままの姿で残っているのは、戦災に遭わないですんだため。
松に深く刻まれたハートは、静かに平和の尊さを物語っているようです。

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栄螺山

ここから眺める霞ヶ池からは、琵琶湖の風景を縮小した「縮景」という作庭の手法が見てとれ、さらに「借景」の手法で卯辰山を取り込み、奥行き感のある「宏大」な眺めが楽しめます。
13代藩主・斉泰が霞ヶ池を掘り広げた際に出た残土を盛り上げて作った高さ9メートルの築山で、廃棄物を見事に再利用しています。

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いろいろなキノコ

園内の苔を観察していると、いろいろなキノコが生えているのも発見します。
園内で見つかったキノコは200種類以上あるそうで、樹木と共生したり、落ち葉や枯れた木を分解して土に還したり、自然界では重要な役割を果たしているため、取らずにそのままにして、自然に近い状態で陸の豊かさを守っているそうです。

このスポットで学習できる項目

学習ポイント

出合ったキノコの名前や自然界の役割について調べてみましょう

黄門橋

金沢で採れる戸室石の1枚石でできた橋で、長さは6メートルあります。
橋の下を流れる渓流は霞ヶ池から流れ出たもので、橋の上に立つと、渓流上流と下流が発するせせらぎと、噴水や滝の水の音に包まれます。兼六園は水の発する音も意識して作庭されています。

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野鳥の楽園

ダイサギやアオサギ〈写真〉などの目立つものや、バードウォッチャーに人気のカワセミ、ルリビタキ、メジロなど、緑豊かな園内にはたくさんの野鳥がやってきます。
これらの野鳥が見られることからも、園内にはさまざまな生きものが棲息し、豊かな都市生態系をつくっていることがよくわかります。

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学習ポイント

出合った野鳥の名前を調べてみましょう

瓢池

もともと沼地だったところを手入れしたもので、池がヒョウタンの形をしていることからこの名前がつきました。池の畔にはカエデの木が多くあり、京都や奈良の名勝地から移植したものといわれています。
高さ6.6メートルの翠滝(みどりたき)があり、和歌山県にある那智の滝をイメージしているそうです。

陸の豊かさを守り、気候変動の具体的な対策となるのが「グリーンインフラ」。
自然の力を借りる持続可能なインフラで、住み続けられるまちづくりに大いに貢献します。
兼六園の存在は、グリーンインフラとしての側面があることにも、ぜひ注目してみてください。

このコースの学習に活用できる学習シートをご用意しました。
学習シートはPDFファイルです。印刷してご利用下さい。

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コースマップ

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コラム 卯辰山見晴らし台

浅野川、犀川によって階段状に削られた河岸段丘が街の中心部まで伸び、その先端にあるのが金沢城や兼六園です。
そのため、アップダウンが多く、金沢は「坂の町」とも呼ばれています。
河岸段丘の斜面は緑地に覆われ、その帯状になった緑地は白山山系へと続く里山につながっています。眺望台の対面に見える卯辰山の見晴らし台に行くと、この斜面緑地の様子が手に取るようにわかります。
さまざまな生きものを橋渡しするこの緑地帯を伝わってきたのか、以前、兼六園に特別天然記念物のニホンカモシカが現れたこともありました。