庭の国宝とも言われる「国の特別名勝」に指定され、日本三名園の一つに数えられる兼六園。
日本が世界に誇れる生きた文化財を維持するため、ここでは専属の庭師をはじめ、たくさんの人が働いています。
伝統を守ることがSDGsのゴール8「働きがいも 経済成長も」にも貢献していることや、このような仕事の大切さを再発見してください。
桂坂
桂坂口料金所から続く坂。かつてここに園内で一、二を争う老樹の桂の木があったことからその名がつきました。
残った巨木の根元から「ひこばえ」と呼ばれる若芽が成長し、世代交代が行われています。
坂を登れば、桜の木が多く植えられている桜ヶ岡で、春は桜の花で覆われます。
このスポットで学習できる項目
学習ポイント
園内に一歩足を踏み入れて、どんなことを感じたか? 後で振り返りましょう
徽軫灯籠とイロハモミジ
徽軫灯籠(ことじとうろう)の脇には、枝ぶりが見事なイロハモミジの古木〈写真〉がありましたが、2021年に病気で枯れてしまいました。
2022年には似た枝ぶりの若い後継木を選び、位置や角度を微調整しながら植えました。
国の特別名勝は日本の宝。そのシンボル的な景観を維持するため、並々ならぬ努力がされています。
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学習ポイント
写真と現在の違いを見くらべ、この先の姿を想像してみましょう
霞ヶ池
面積は約5,800平方メートルと園内で一番大きな池。庭園に日本の名勝を移した「縮景」とよぶ技法で、この池は琵琶湖を模しています。
蓬莱島(ほうらいじま)〈写真〉と呼ばれる島は、琵琶湖の竹生島(ちくぶじま)に見立て、琵琶湖畔にある唐崎神社から種を取り寄せた唐崎松が目をひきます。
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月見橋・月見灯籠・玩月松
卯辰山から昇る中秋の名月を眺めるために作られた月見橋があり、そのそばには、上から下まで全てが丸い月見灯籠と、唐崎松と肩を並べ、見事な枝ぶりの玩月松(がんげつのまつ)があります。
中秋の名月に合わせて、夜間特別開園も行い、往時の風雅なお月見気分を楽しむことができます。
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唐崎松
日本に古くから根付くお月見の風習。
兼六園には専属の庭師が6名いて、重要な仕事は園内に約8000本もある樹木を枯らさずに守ることです。
なかでも気を遣っているのがこの松。
霞ヶ池の畔にある樹齢約180年のクロマツで、11月から3月の雪吊りが施された姿はとても美しく、徽軫灯籠ともども、金沢のシンボル的な存在です。
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学習ポイント
剪定技術の集大成ともいわれる唐崎松の枝ぶりをじっくり観察しましょう
七福神山・雪見橋
日本人が古くから愛でるのを好むものに雪月花があります。
園内にはその三種の名前がついた橋もあり、その一つが雪見橋です。橋の向こうにはおめでたい七福神に見立てた自然石が置かれた築山があります。
12代藩主の前田斉広(なりなが)が建てた竹沢御殿の書院から眺める庭として作られたもので、当時の姿をとどめています。
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学習ポイント
日本人が好む「雪月花」のことを調べ、日本文化への関心を深めましょう
曲水
庭園にある曲がりくねった水路を曲水と呼びますが、ここの曲水をのぞき込んでみると水量が豊富で、底の玉石がきれいなことに驚くかもしれません。
玉石にはすぐに藻がつくので、週に1、2回清掃を行っています。
他にも草取りや落ち葉清掃など、特別名勝の美しい景観を守るためにたくさんの人が働いています。
このスポットで学習できる項目
学習ポイント
庭園を美しく維持していくために、どんな仕事があるのか、調べてみましょう
根上松
13代藩主・斉泰(なりやす)が植えた伝わる樹齢約200年のクロマツで、約40本の根が2メートルくらいの高さまで迫り上がっています。
このように根が盛り上がっているのは、自然にできたものではなく、完成形を想定してあらかじめ盛った土に松を植え、後にその土を取り払って人工的に作られたものといわれています。
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学習ポイント
この松は最終形(ゴール)を想定して、今できることに取り組む、SDGsのバックキャスティングの考え方を具現化しています
鶺鴒島
鶺鴒島(せきれいじま)は夫婦島ともいい、世継ぎがなければお家とりつぶしになった時代、子孫繁栄の象徴とされる小鳥の「セキレイ」にちなみ、大名家に最も大切な子孫繁栄の願いが込められています。
島の中には人生の三大儀式である誕生を表す陰陽石、結婚を表す相生の松、死を表す五重の塔があります。
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山崎山
小立野口の近くにある築山。まるで深い山にいるような深閑とした佇まいで、特に新緑と紅葉が見事です。
金沢城を防衛するために造られた外惣構(そうがまえ)の土塁跡を築山に改修したものといわれています。
山頂には茅葺き屋根の御亭があり、のんびり風景を楽しめます。
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学習ポイント
緑に包まれる心地よさを体感しましょう
龍石の椿
椿は日本原産で、古くから庭木として親しまれ、品種改良などによりたくさんの品種が存在します。
園内にはいくつもの種類の椿があり、気品のある優雅な花が咲くこの椿は、茶人に好まれています。
椿の前にある、龍の形をした自然石が「龍石」で、園内にはこの他、「獅子巌」「虎石」もあり、あわせて三要石と呼んでいます。
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学習ポイント
兼六園にある他の椿を探してみましょう。また、よく似た山茶花(さざんか)との違いも調べてみましょう
ヤマトフデゴケ
兼六園には約70種類もの苔がありますが、ビロードのようなこの苔は特に美しいです。
上に格子状にナイロンの糸が張りめぐらされていますが、これは鳥が苔を突くのを防ぐため。
苔は自然界で陸の豊かさを守る重要な役割を果たし、都市型の洪水を防いだり、ヒートアイランドを抑制したり、人々に癒しを与えたりもしています。
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学習ポイント
園内でいろいろな種類の苔を探してみましょう
梅林
昭和43年(1968)から2年をかけて作られ、北野天満宮、太宰府天満宮、湯島天神、水戸偕楽園などの協力により、全国の名梅が集められています。
平成6年(1994)から10年以上を費やして、特別名勝庭園にふさわしい今の姿に再整備されました。
白梅が11種類約130本、紅梅が13種類約70本植えられています。
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津田玄蕃邸
加賀藩の重臣・(つだげんばまさくに)邸を大正時代に移築したもの。
現在は石川県金沢城・兼六園管理事務所分室として使用されています。
邸の庭では、強い台風や落雷、病害虫などによって、万が一枯れてしまった時に備えて、さまざまな名木の後継木が育てられています。
このスポットで学習できる項目
学習ポイント
名木の枯死に備える意味を考えましょう
時雨亭
江戸時代に噴水の前にあった時雨亭を再建したもので、茶室は残された図面をもとに復元されています。
ここでは抹茶と季節の和菓子を楽しんだり、座敷から庭園を眺めたりすることができます。
茶道や日本建築に触れて、伝統文化の魅力やそれを引き継いでいく大切さに心を寄せてみてください。
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夕顔亭
250年ほど前に建てられた茶室。滝の音を聞き、景色を楽しめるように、茶室としては珍しい開放的な造りになっています。
加賀藩は文化奨励策を政策の柱に掲げ、茶の湯は武家に限らず庶民にも広まっていきました。
茶の湯が盛んになったことにより、工芸や食といった文化が発展し、その伝統はいまも金沢に引き継がれています。
このスポットで学習できる項目
学習ポイント
「質の高い教育をみんなに」、「産業と技術革新の基盤をつくろう」を、加賀藩は実践していて、それが現在の繁栄につながっています
瓢池
池がヒョウタンの形をしていることからこの名前がつきました。
池の畔にはカエデの木が多くあり、京都や奈良の名勝地から移植したものといわれています。
高さ6.6メートルの翠滝(みどりたき)があり、11代藩主・治脩(はるなが)は気に入った音になるまで滝を何度も作り直させたそうです。
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学習ポイント
緑地帯ができた理由を考えてみましょう
蓮池門跡
兼六園の入園口は7カ所ありますが、その一つ、蓮池門口が、江戸時代の正門・蓮池門があったところ。
かつては石段を上った右に番所があったそうで、門には松平定信筆の兼六園の額がかけられていました。
現在、門は取り払われ、「特別名勝兼六園」の石標が立っています。
このスポットで学習できる項目
学習ポイント
世界に誇れる庭師の仕事を見て、この先、持続可能な社会を作る上で、必要だと思う技や知識について、具体的に挙げてみましょう
代々受け継がれてきた庭師の知恵や技術からは学ぶことがいっぱい。
それは住み続けられるまちづくりを考える上でも、国内外からたくさんの来訪者を呼び、経済成長をさせるためにも必要不可欠なこと。
庭師に限らず、伝統産業や伝統文化の中には、途絶えると再生できないことばかり。
継承していくことの大切さを、端々に伝統が息づく兼六園で、ぜひ感じとってください。
このコースの学習に活用できる
学習シートはPDFファイルです。
コースマップ
コラム 雪吊り
北陸地方では湿気を含んだ重たい雪が降ります。雪の重さで枝が折れないようにするため、縄で枝を吊るのが雪吊りです。
いくつかの種類があり、唐崎松にも施される、芯柱の先端から各枝へと放射状に縄を張る「りんご吊り」が最もポピュラー。
雪吊りは毎年、11月1日に唐崎松からスタートして、1カ月半をかけて園内の約800カ所に施されます。
唐崎松は芯柱の高さが13〜14メートルにもなり、庭師全員で力を合わせて作業にあたります。
一方、取り外しは3月15日頃から始まり、こちらはわずか1週間で完了します。
ちなみに、雪吊りに使用された藁縄は、外された後は細かく裁断されて、堆肥として再利用されています。